トレード (5) プレミアムをねらえ
今までの話が本当なら(笑)、合理的なトレードによりパレート最適に近づき、トレード当事者は潤います。ただその潤い方には両当事者で違いがあり一方がプレミアムにより、より多くの利益を得ることになります。
プレミアムはどうねらう?
先の例でBは2B2(5)で3B1(10)を取得できました。これだけみるとあまりにおいしい話ですが、限定的な状況ではお互いにとってwin/win deal。一方的に奪う案件とは違う、という話をしました。実際に不合理に見える案件でも、結構奪われているかに見える相手のプレイヤーも人間で、自分の判断上は合理的だとacceptしているものです。
実際に最上位のプレイヤーをどのフォーマットでもトレードで取得する人がいます。これは毎回さくらがいるというわけではなく、うまーくプレミアを利用しているのですね。
では、こういったプレミアムを生かせる状況というのはどうやって作るのでしょうか。先のBを例に、どのような前提条件の下にこの取引が行われたか、多少細かめに見てみましょう。Bは偶然この立場になったのか、意図的にBになることが可能なのか、それがポイントです。
この取引の場合、以下のようなポイントの全てを満たしているために、Bがプレミアを取得することができたのです。
(1)ポジションが2B/3Bである
前回も書きましたが、フォーマットがUtil2つなら状況は全く違いました。フォーマットが2B/3Bであるからこそ、プレミアム発生の余地があったのでしたね。ただ、これはドラフト前に確認できます。ドラフト前によくよく各フォーマットでどこがパブリックと違い、どこにパブリックで見落とされがちなプレミア選手が発生するかを確認しておけば、それで足ります。
(2)2Bの優秀選手を独占できている
Bは2Bの上位2名の優秀な選手をとっています。それによりそもそものプレミアが発生し、それを交渉で増加させた図です。どのポジションにどの程度の選手がいるのか、というのもドラフト前に確認可能です。通常使いたいよりも選手層が薄いということであれば、選手の実力以上の交換価値が発生し、プレミア付きのトレードが可能となるのです。
実際にはパブリックで12名のプレイヤーがいますし、FAという存在もあります。そんなに簡単にプレミア選手を独占するというのはできない場合が多いですが、プレミアのつきそうな形の選手というのは一定数います。そういった選手は、状況が好転すれば高く売れる可能性があるんですね。価値軸は自分で探すとしても、こういった発想を覚えておくのはきわめて有効かと思います。
また、独占禁止法的な考え方ですが、独占するマーケットを画する能力というのは非常に大事になります。実はこの場合、Bが見つけたマーケットは2Bではなく「2B上位」なのです。ACも2B自体はもっていますから。2B上位に、独占の対象となるマーケットを見つけたBの勝利なのです。とすると、価値軸をいっぱい持って、独占の対象をたくさん見つけられるタイプの方が、トレード向きということはいえるかと思います。単にFAがあるというだけではマーケットで独占できないということにはならず、たとえば、FAが薄く、いい選手を重複して持っているプレイヤーがトレードしないタイプであるなら、いい選手を持っているたとえばBはそれで、プレミアを享受するトレードが可能になるのです。
(3)ACが合理的にトレードする人間である
これが難しいんです(笑)。どんな人かわからないし、どんなプレーをするかも。単に好きな選手を集めたいだけかもしれないし、すごくトレードする人かもしれない、単に放置するだけかもしれないし、どんどん積極的に入れ替える人かもしれない。ある程度、プロフィールからプレイスタイルを探すことができると思いますが、実際応用するのは非常に難しい。
プレミアポジションを2つとるというのは、トレードが成立しないときわめて危険な行為です。説例でもたぶんBはドラフト1,2巡を使って2Bをとったのでしょう。その間、他の人は能力の高い3Bをとっている。しかも2Bを2名とってしまった。トレードが成立しない限り、プレミアポジションに固執したBの合計点は最下位ですから。
ただ、トレードに応じる人が何名かそのリーグにいると、パレート最適に近づくトレードが行われる限り、トレードに積極的な人が上位に行くことになり、トレードに積極的ではないが勝ちたいという人も最終的にはトレードに乗り出すといううごきになりそうな気もしています。
(4)ACが独占戦略をとらない
説例の場合、逆に言うとBだけが3Bの能力の高いのを持っていないのです。従って、ACに結託されて2Bを安く売れといわれると、現在最下位であり、そのまま放置したら負けてしまうBは、2Bを安く売らざるを得なくなります。
としてもACは利益相反関係にあります。Bはいずれかにしかプレミア2Bを売れない以上、仲を裂くということは最終的にはできそうです。
ところで、ここには、独占禁止法(anti trust)の基本的精神を見ることができます。
もしACが結託してBに2Bの安売りを迫るとする、それは、換言すると、3B販売業者であるACが結託して3Bの価格を上げているともいえます。で、消費者であるBが自分の通貨である2Bを有効に使えず、3Bを高く買うか、そもそも買うのをあきらめるしかない。
例えばBが買うのをあきらめた場合を考えてみましょう。
ACは3Bの安売りを回避し、かつ、いずれかが3位に落ちるリスクを回避することができるというメリットがあるのです。要はACにはメリットがある。
しかしAC結託することを決定し、競争して3Bを安く売らない事にしたために、全体の富はトレード前の32(A11, B9, C12)にとどまり、競争の結果(A14, B18, C12の合計44になります。)生じる全体の富の増加(12が増加量ですね)が発生しなくなるのです。したがって、社会全体としては富が増える機会を逃しているのです。
この富の増加の機会はなぜなくなったか、ACが己の小さな利益(最下位にならない)を守るということに固執したからです。そのために、全体が損をするんですね。
これがまずいというので独占禁止法というのが制定されているんですね。いやー、留学でいろいろ肌で法律趣旨を学びます。留学の価値もあるというもの(笑)。
まとめ
以上のように、プレミアには自分で取りに行ける部分と運や流れの部分があります。ただ、流れが向きさえすれば、プレミアをとれるという状況にしておくと、合理的なwin/winトレードでプレミアをもらうということも比較的できるようになるのです。
ま、これは一例について、思いつくプレミア発生の前提を検討したに過ぎません。様々な場面で様々にプレミアは発生するので、常にプレミアに目を向けるというのがトレード戦士のやり方になってくるんでしょうかね。
この例で言うと、以上の前提があるなら2B1(8)を1人目にとったBはトレードを前提に2B2(5)を2人目にドラフトしたのは正解だったということになるのですかね。
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