2008-05-07

トレード (8) 独占戦略はどこまで有効か

もう少し掘り下げて独占戦略の有効性について考えてみます。


この間のBC間の取引が終了した状態で、世の中ABしかいないとします。

なんかわかりにくいですが、要は以下の状態。

A 3B1(10), 3B2(9), 2B15(1) 合計11点(1位)
B 2B1(8), 2B2(5), 2B3(4) 合計8点(2位)

Bは2Bのみで。Aは両方います。

ここで、実際のゲームに近いようにもう少し因子を足してみましょう。

形のコストα

実際のゲームでは、当該スポットに選手がいないことと(X0)、当該スポットにX1という優秀な選手がいること、X2という普通の選手がいることという3つの状況がある場合、以下のような式になることが多いです。

X1>X2>>>X0

要は、誰もいないというのが極端に痛いという状況ですね。これを表すために、選手の能力に全員下駄を履かせてもいいのですが、めんどくさい(笑)ので誰もいないときにペナルティを課するという因子を入れてみます。依然祭りの構造を検討するときは、誰もとれなければ0を掛けることにしましたが、今回はちょっと趣向を変えて、ポジションにかかわらずαだけマイナスすることにしましょう。

とすると、総合点は以下の通り。

A 11点
B 8-α点

ここで検討したいのは、Bが形を崩してまでその後のトレードによるプレミアのキャッシュアウトを期待して独占を追求した場合、その形をくずしたというコストは交渉にどういう影響を及ぼすか、です。実際にトレードを前提にしたドラフトをやってみた感触と一致するか、興味があったので。

AB間のトレード

A 3B1(10), 3B2(9), 2B15(1) 合計11点(1位)
B 2B1(8), 2B2(5),2B3(4) 合計8-α点(2位)

AB間の1対1トレードで考えられるのは9通りですが、1対1のトレードである限り、Aの2B15(1)をBがもらうメリットはないので、これは除外して考えると、両者のポイントが増加するのは以下の6通り。



Aのトレード後

増加ポイント

Bのトレード後

増加ポイント

ⅰ3B1(10)と2B1(8)

3B2(9)+B1(8)=17

6

B1(10)+2B2(5)=15

7+α

ⅱ3B1(10)2B2(5)

3B2(9)+2B2(5)=14

3

B1(10)+B1(8)=18

10+α

ⅲ3B1(10)と2B3(4)

3B2(9)+B3(4)=13

2

B1(10)+B1(8)=18

10+α

3B2(9)

B1(8)

B1(10)+B1(8)=18

7

3B2(9)+2B2(5)=14

6+α

3B2(9)2B2(5)

B1(10)+2B2(5)=15

4

3B2(9)+B1(8)=17

9+α

3B2(9)

B3(4)

B1(10)+B3(4)=14

3

3B2(9)+B1(8)=17

9+α


Bにとっては2B2(5)を出そうが、2B3(4)を出そうが同じになります。従って、ⅲ、ⅵは除外され、ⅰ、ⅱ、ⅳ、ⅴのみがパレート最適を実現する取引として交渉の対象となります。

残ったのは4つ


Aのトレード後

増加ポイント

Bのトレード後

増加ポイント

ⅰ3B1(10)と2B1(8)

3B2(9)+B1(8)=17

6

B1(10)+2B2(5)=15

7+α

ⅱ3B1(10)2B2(5)

3B2(9)+2B2(5)=14

3

B1(10)+B1(8)=18

10+α

3B2(9)

B1(8)

B1(10)+B1(8)=18

7

3B2(9)+2B2(5)=14

6+α

3B2(9)2B2(5)

B1(10)+2B2(5)=15

4

3B2(9)+B1(8)=17

9+α


このうちどれになってもパレート最適の実現です。

AB間の交渉材料

この場合の交渉はABどちらが強いでしょう?

Aの強い要素
● 元々Aの方が順位、ポイントともに上である。
● 出す選手の客観的な実力が常にAの方が上(3Bの方が2Bより強い)である。
● 増加するポイントがBの方が上である(Bにメリットが多い取引)。これはαが1でもあれば、すべての取引において、真実となります。Aとしては、そちらの方が得るものがそもそも多いのだから、譲歩するべきでしょう、といえるのです。

Bの強い要素
● Aもポイントが上昇する以上、取引に応じたいはず

ま、どちらが強いか、その場の交渉の持って行き方もありますが、通常で見る限り、Aの方に有利な交渉であり、ⅳで妥結する可能性が高いといえます。

具体的にどうコストは響くか

ここでのポイントはαが大きい場合です。例えばαが10である場合、もともとのBの点数は-2点です。

ⅳの取引が行われると、Aが7ポイントメリットを受けるのに対して、Bは16ポイントメリットを受けます。一番Aに有利な取引ですら、Bが莫大な利益を得ることになります。そしてゲーム中では、これがAにもBにも明らかになっているのです。

このため、Aとしては、ⅳの取引ですらBのためにしてやっていると感じ、Bもまた、Aに取引をしてもらった、と感謝してしまう気持ちが生まれるのです。

これからいえることは、Bは形を崩してまで独占をねらいにいったが、形を崩したコストがあるために、どうしても交渉で足元を見られ、強く出ることができない、というのがあると思います。

実際の教訓

実際にも、ショート、キャッチャーといった守備的なポジションについてトレード目的で上位独占をねらった場合、ほかのポジションが弱いためにチームとして弱くなっている場合があります。その場合、プレミアポジションを独占しているにもかかわらず、プレミアを取りきれないという事態に容易になり得るのです。

どこまで形を崩して独占をねらいに行くかというのは、状況次第で、プレミアの量がかえって減らない限度での独占にとどめるべきと思われます。

ま、この意味でドラフトでショートを指名しなかった私の2つのドラフトは失敗ですね。いずれも交渉で強く出られませんでした。

野球の場合、ベンチ要員の少なさ、必要なポジションの多さからみるに、独占をねらうとしても、ちょっとくらいしかねらえなさそうだなというのが印象です。αの値が結構大きい。しかもトレードに応じない人も結構いるので、αが上手く解消しない可能性も大きいのです。

また、実際のパブリックフォーマットの場合、12名いること、FAの充実があることから、そもそも独占は難しいです。しかも、例えばクローザーとかを独占しても各部門順位に応じたポイントしかもらえないので圧倒的な1位になるメリットはないのです。従って独占ができたとしても、独占プレミアムをキャッシュアウトしたいという思いは結構あり(これもαの一部と表現可能かもしれません)、その結果、上手くプレミアムをとれないということは十分にあるのかなと思われます。これが通常プレミアがつくクローザーが安く先発と交換されている場合の典型ですね。

ま、形を崩して独占をねらう場合は、相当覚悟が必要そうです(笑)。私は今までうまくいったことがありませんから。

PS 最後に余談ですが、ともに形を崩したBCのみが存在する場合、αが大きければ大きいほどともにトレードにいたるインセンティブが大きくなり(ともに通常の上昇ポイント+αの改善が見込めるからです)比較的早い段階でトレードが成立する可能性が高まります(現状のデメリット、改善の効果が高いほど最適状態に近づく取引の幅も広く、それだけ契約締結にいたるまでの交渉時間も短くて済む)。これも実際の感覚とにています。


No comments: