2007-03-16

Google訴訟

今回は○スポの記事にもならないような憶測内容です。そのつもりでお読みください。
先日ちょっとふれましたが、GoogleのYouTube関連で大きな訴訟が起こっています。

Engadgetでは以下のようなふれられ方です。
http://japanese.engadget.com/2007/03/14/google-youtube-viacom-google/

文句いう相手を買ってしまえというのは、いかにもアメリカチックですよね。敵対的買収でいうところのパックマンディフェンス(相手を食っちゃうことで敵をなくす、ツバメ返し・カウンター・窮鼠猫をかむ戦術)みたいなものでしょうか。

一連の報道をみていると、Googleは、この問題に対処するためか、以前から各種メディアと提携交渉をしているようです。外野から見るところ、大コンテンツホルダーと仲良くなって訴訟をさけようとしている模様。 大きい訴訟さえなければ違反行為自体は問わないというところでしょうか。日本人的なきまじめさからは若干違和感ありですが、アメリカ的にはOKなのでしょう。

個人的にはYouTubeは上場できない違法行為があったからMAを選んだんじゃないかと思っています。投資銀行の立場からすると、上場を勧めるか非公開のままMAを勧めるかは常に頭の痛いところだと思います。限られた情報の中からみるに、YouTubeの行為は100%合法というには難しく、この企業はこれ以外に事業がない。ということは、いつ会社の全事業の続行が不可能になるかわからない。そんな状態で、何年もかかる上場作業を始めるのは関係者全員に負担が大きい。よって、金額は減るものの手っ取り早く非公開MAを勧めるという流れになったんじゃないかと思ってます。

で、それを買ったのが、お金持ちのGoogle。個人的には、Googleには、上場企業としてどこまで子会社の違法行為を取り締まるか、しっかり方針を示してほしいものです。道義的には無論、経済的にもその方がいいように思います。

みんな連想するのが、音楽共有サービス(ナップスター)との比較。あのときは、サービス会社が訴訟で疲弊し、音楽会社がプロテクトCDで不評となったた後に、新たなサービスをひっさげた瀕死のアップルが出てきて、いいところを総取りした感じです。今回も同じ事が起こらないとも限らない。上記Googleの提携は以前のAppleの動きをあらかじめGoogleがすることで後から来る人を封じているのでしょうが、それだけで防げるか。

Appleの新しかったのは、ハードまで含めた垂直統合的な新サービス形態を示したこと。あのときも有料配信をしたい人はたくさんいて、実際に始めている人もいた。ただ、違法の香りがするとはいえ広く行き渡った無料のサービスがある以上、有料では勝負にならないとの見方が一般的であった。

他の企業が行ったのが、無料を訴訟でたたくというやり方。偽ブランドをたたくときや、アメリカがダンビングといちゃもんをつけるときと同じですね。ネガティブキャンペーンです。相手方の足を引っ張ることで自分の水の方ががあーまいよと訴えるわけです。でもこれだけだと正直万人の支持を得るのは難しい。アメリカがダンピングでスーパー301条を持ち出すとき、日本は常に反感を持ってますし、多分似せブランドかコンセプトが似ているだけの商品か限界のものについては訴えられる方も反感を持っているんだと思います。利用者が罰則を受ける可能性が少ないのも欠点。たとえ1,2例犠牲者が出ても大多数は救われてしまう。

必要となるのは、供給者の撲滅か、大多数のユーザーの移行です。後者の方が効果的なのですが、後者のためには後者の利益誘導が必要。有料と無料と同じ土俵で戦ったのでは有料サービスが勝つのが難しいのは当然。プロテクトCDで利用者が喜ばないのも当然。そこで、土俵を変えたのがアップル。

無論、最初土俵を変える事に対する批判は強く、ipodも最初から成功したわけではありません。むしろ、ituneが当初Macでしか使えないことや、ipodがituneにしか接続しないこと、録音ファイル方式がMP3ではなく独自方式であることなどは、アップル特有の閉鎖感があり、オープンなinternetに反するものとして大きなシェアをとれないだろうとの予測がつよかったのです。しかし、アップルは、単にこれに反発するのではなく、ハード的に使ってみたくなる機械で徹底的に利用者を利益誘導したのです。人間欲には弱いですからね。結局みんなipodを使ってみたくてしょうがなかったためにAppleの思惑通り進みました。

一度強くなってしまえば、コンテンツホルダーとの交渉もうまくいき、どんどんコンテンツも集まる好循環になります。この状態が今のApple。

今回も新サービスというのが生まれる余地はあり(僕には想像もつきませんが)、そのリスクとうのは提携では完全に防ぐのは難しいと思ってます。

なお、ブラウザ戦争(マイクロソフト対ネットスケープ)との比較も可能かと思います。あのときは、有料のネットスケープは当初シェアを持っていたものの、最終的には無料のインターネットエクスプローラに負けました。ネットスケープは土俵を変えることができず、訴訟戦略しかとれなかった。一方マイクロソフトはdeep pocket(予算が潤沢という意味)もあり、囲い込みにもなれていた。また、一応OSとブラウザは一体だとして別の土俵を準備しようともした。こう考えるとマイクロソフトが勝ったのは至極当然ですね。

今回のYouTubeはGoogleというdeep pocketがあります。これにより、お金で解決が可能です。Googleは検索では完全に勝ち組なので、勝手にコンテンツホルダーがよってくる一面もあり、こういった面を使って本の内容の検索サービスまで乗り出せている実績もあります。一方、Googleは、アップルと違い、オープンなインターネットを最大限に活用しているインターネットの寵児。囲い込みがうまくできるかという問題はあると思います。いままでは、自分で最高のものを生み出せば周りが勝手によって来ていたのが、今回もそううまくいくか。

避けてほしいのは、利益が出ていない部門だからGoogle全体にとっては大きな問題ではないといって時間稼ぎをして、最後にYouTubeを手放すこと。入手に巨額の金を使って、巨額の訴訟リスクがあると言われている以上、Google全体にとっても重要な問題であることは疑いないと思います。

個人的には、Googleは既に巨額の資金を得ているので、何とかうまく解決するんじゃないかと思っています。経営者の頭の良さにも期待してますし。無駄な買収でなかったことを示してもらいたいとおもいます。

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