2007-11-02

完全試合を放棄するか

中日が日本シリーズで優勝しました。

セリーグクライマックスシリーズで憎たらしいほどの強さを誇っていたのですから、当然、日本シリーズも優勝してほしいと思う反面、日ハムダルビッシュのマウンドで試合を支配する様と、打撃が弱くても優勝できる姿を見たいという気持ちもあり、どっちもがんばれと、結果だけ追っていました。

優勝決定戦、中日の山井は8回終了時点で一人の走者も出さない完全試合ペース。一方の日ハム・ダルビッシュも好投し、試合は1対0の緊迫の投手戦。いつも9回を任される歴代最高の左腕押さえ、岩瀬は、いつでも登板出来るように、準備万端。

ここで、落合監督は、岩瀬に継投するという作戦をとったのですが、どうすべきですかね。

たぶん、監督は、一瞬で決断するんでしょうし、ファンも肯定にせよ、否定にせよ、直感で判断するんでしょうが、ここはあえてぐじぐじ考えてみたいと思います。

山井は、9月の月間MVPを取得し、この日も好投したものの、1年間通じて活躍したわけでもなく、また、先発の柱の目安といわれる10勝を飾ったこともありません。また、9月の月間MVPも防御率3.00と絶対的な数字を残しての受賞ではありません。

一方の岩瀬。入団以来、大きな怪我がなく、9年連続50試合以上登板。通産防御率は1.97と2点を切り、奪三振率も、576.2回を投げ534三振と、とんでもない数字です。当初セットアッパーからスタートしたためセーブ数は157にとどまりますが、それでも3年連続40セーブ。藤川に抜かれるまで46セーブの歴代最高記録も持っていました。

個人的には歴代最高の鉄腕ではないかと思っています。少なくとも私が野球を見出した時代以降、ここまで登板して、超一流の成績を残している人はいません。今年の数字は阪神のJFKに比べると防御率等で見劣りしますが、それでもリーグを代表するスーパースットパーであることに疑問の余地はないです。

よって、たとえば、2-1とかであれば、岩瀬をこの場面で投入するのは当然の采配なのです。勝つためには当たり前すぎるくらい当たり前の。

問題は、完全試合のかかった試合でも継投させるべきか。

完全試合は、一人の走者も出さない勝ち試合。9回まで0対0では、それだけでは成立しません。試合をおわらせないと。

どのくらい難しいかというと、日本では1994年の槙原投手依頼成立していない記録です。ざっくりいって、1年130試合(その間増減があるので、実際は異なります)で計算しても、1995年から2007年までで、130*6の12年で、1万試合以上成立していない記録ですね。相当珍しい記録です。

山井投手は、今シーズン、353人の打者と対戦して、安打、与四死球合計108.ざっくり言って3割の出塁を許しています。この日の調子を計るのに、この数字を使うのが適切かわかりませんが。とすると、3人連続で抑える可能性は、だいたい3割5分。

1万分の1以下のものに、35%くらいまで近寄った(相当怪しいどんぶり勘定ですが)というと、若干感覚的に近いでしょうか。

しかも、日本シリーズの優勝決定戦という大舞台で。

ほとんどありえないくらいのチャンスです。ここまでチャンスが広がることすら、そうとう珍しいと思います。

しかも中日はここまで3勝1敗。この日登板しているダルビッシュ以外には負けていません。ここで負けてもまだまだ勝てそう。

中日サイドの説明に山井投手にまめができたからというのがあります。

まめの件は、よくわかりません。説明なのかもしれないし、本当にどうしようもなかったのかもしれません。ただ、シーズンも終わる中で、別に血を流しながら投げるってのもぜんぜんありだと思うので、まめは本質的な問題なのか?とおもうので、ここでは無視したいと思います。

私なら、ここはよう変えません。たぶん続投。少なくともヒット打たれるまでは。エースではないので、完封まで支援するかどうかわかりませんが、せっかくだしチャレンジさせますね。

個人記録を球団が後押しするのはあまり好きではありませんが、この日の山井投手の出来と、日本ハム打線の相性を考えると、個人記録がない、通常の2-1でも続投すらありえたと思いますし。

ただ、落合監督は継投した。

僕は、それこそ、落合監督が中日黄金時代を築いている理由だと思います。ちゃんと、何をすれば勝てるかというのに焦点を絞ってやっている。

野球にファンが必要なのは言うまでもありませんが、少なくとも現在の時代の趨勢は、野球はチームとして勝つことが至上で、個人記録は二の次というもの。これは日本もアメリカも変わりません。首位打者争いで、欠場したり、ホームラン王のために1番をうたせたりというのはとかく批判が多いです。

それは通常の形が、一番かつ確率が高いのに、それを崩して個人記録を狙いにいっているからだと思います。

今回賛否両論に分かれるのは、山井投手が当日、現に好投しており、抑える可能性も十分にあるからだと思います。まだまだ勝てる、優勝も出来るよというのが前提。

ただ、どうですかね。

日本シリーズは短期決戦で、一方のチームが一方的に強く見えることがままあります。昨年までのパリーグの球団や、今年のクライマックスシリーズの中日、ワールドシリーズのレッドソックスなど。

でも野球は本質的には運の要素が強いスポーツ。勝率8割とかでシーズンを終える球団とかは基本的になく、参加したばかりの楽天が弱いといわれていた時代ですら、勝率が1割を切ることはありませんでした。特に日本では球団間の実力が拮抗している。どんなに弱いとおもっても、他のスポーツみたいな差は出ないように思います。

それだけに一度握った流れは放したくないところ。日本シリーズでは過去にも3連勝の後の4連敗というのはそれなりにあります。

それだけに、少しでもかつ可能性が高い手段にかけるというのは、本当に重要になるのではないかと思います。

特に中日の場合、ずっと日本一になれていなくて悲願ということであれば。できることは全部すべきなのだと思います。

落合監督もあそこで交代させると批判を浴びることは百も承知だったと思います。そこで変えられるから名監督なんじゃないでしょうか。中日をあそこまで強くした監督はいません。ダイエーのように経営母体が変わって急にお金を使えるようになったわけでもなく、昔と基本的には変わらない経営(むろん強くなったため選手の年俸総額は上がっているとは思いますが)で、就任以来ずっと強いドラゴンズを作り上げるのは並大抵のことではありません。

原監督の例を出すまでもなく、強い球団でも、勝てる監督をつけておかないと、なかなか勝てないものです。勝てる監督と、ファンにわかりやすい監督ってのは残念ながら若干違うようですが、ファンも勝てない球団はいやなのは当然です。だから、わからなくても勝てる監督は重要で、勝っている限り支援するべきなんだろうなぁと思うのです。

僕個人的には、落合監督は多分友達にならないタイプだし、阪神にめっぽう強い中日は嫌い。ドジャーズまで嫌いになりそうなくらい、ユニフォームを見るたびにむかつく。岩瀬出てこないで、っていつも思ってます。

ただ、今回の采配は、ありなんだろうなぁ、さすがだなぁと感じてしまうのですね。だから強くなるんだろうなと。

最後に、中日さん、優勝おめでとうございます。FAの引止めなんてせこいことせず、もっと、阪神が争える状態まで、チーム力落として来年も競い合いましょう(笑)。

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