2008-06-28

編集者な日々(5) 変更履歴とつきあう

変更履歴を使用しないというのが米国の法律事務所の主流です。

まぁ、動きに癖があり、バグかと思われるものも多いほか、ワードに保存されるメタデータ(文字以外の修飾情報)が多くなるのを割けるというのが主な趣旨のようです。また、理屈上、履歴を入れられたデータは相手が最後にさわったものなので、履歴なしでどこを変えられているかわからない以上、それをベースに作業すべきではないというのもあります。

そうはいうものの、変更履歴を使用する場合もあるのが現実。しかも、相手のコメントをそのドラフトで採用するようクライアントに求められることもしばしば。

そのときに人間の直感で考えるのは、コメントを次々表示してくれて、採用不採用のみをちゃっちゃと決めたいと言うこと。それを実現するためのショートカットがあると便利ですよね。

というわけでこのエントリ。


変更履歴関係は、デフォルトでは、ワードのショートカットキーは設定されておらず、マウスでの作業がメインとなりますがこれは相当面倒。

そこで、以下のようなショートカットキーをマクロで一括設定して使用することにしています。マクロを使用せずに一個ずつショートカットを設定する場合は、メニューの、ツール→ユーザ設定→オプション→キーボードから、コマンド設定の分類でツールを選び、command =のあとにある単語を探してもらうと個別に設定できます。たとえばNextChangeOrCommentとかですね。

これを設定すると、履歴をalt+上下で探し、それについて採用不採用をalt+左右で決定していくことができ、作業が結構早くなったりします。

よろしければ、お試しください。

'次の変更履歴 alt 下
CustomizationContext = NormalTemplate
KeyBindings.Add KeyCode:=BuildKeyCode(40, wdKeyAlt), KeyCategory:= _
wdKeyCategoryCommand, Command:="NextChangeOrComment"

'前の変更履歴 alt 上
CustomizationContext = NormalTemplate
KeyBindings.Add KeyCode:=BuildKeyCode(38, wdKeyAlt), KeyCategory:= _
wdKeyCategoryCommand, Command:="PreviousChangeOrComment"

'履歴を承諾 alt <-
CustomizationContext = NormalTemplate
KeyBindings.Add KeyCode:=BuildKeyCode(39, wdKeyAlt), KeyCategory:= _
wdKeyCategoryCommand, Command:="AcceptChangesSelected"

'履歴を元に戻す alt ->
CustomizationContext = NormalTemplate
KeyBindings.Add KeyCode:=BuildKeyCode(37, wdKeyAlt), KeyCategory:= _
wdKeyCategoryCommand, Command:="RejectChangesSelected"

編集者な日々(4) 単語の使用回数を知る

ドラフトが完成に近づく中、何かコメントを入れる際は、他の箇所にどのような影響が及ぶか予測したかったりします。

その際に役に立つのは、今直しを入れようとしている単語がどの程度使われているか知ること。マイナー単語なのか、いっぱい使われているのか。


で、それようのマクロを昔作っていたのを思い出し、引っ張り出してみました。

ワードで文字を選択した状態でこのマクロを走らせるとそのドキュメント上にその単語が何個あるか表示してくれるというとてもシンプルな機能。

たとえば「支配権」とかいう単語がその章で何回使われているのか知りたい場合、支配権、ってのを選択してこのマクロを走らせるだけですぐに知ることができます。

個人の環境では、これをctrl + alt + 十字キーの0に割り当てて、適宜使っています。
割り当てのためのマクロは

'選択単語の使用回数を数える ctrl + alt + num 0
CustomizationContext = NormalTemplate
KeyBindings.Add KeyCode:=BuildKeyCode(wdKeyNumeric0, wdKeyControl, _
wdKeyAlt), KeyCategory:=wdKeyCategoryMacro, Command:="選択単語"

ctrl + alt + num 0を、選択単語というマクロを起動させるというショートカットにしろというものですね。

で、本体の選択単語というマクロ。センスのない名前ですが。
ま、よろしければお使いください。

Sub 選択単語()

Dim hit As Integer
Dim yougo As String

hit = 0
yougo = Selection.Text

'画面更新をしない
With Application
.ScreenUpdating = False
.DisplayAlerts = wdAlertsNone
End With

NewWindow

'画面更新をしない
With Application
.ScreenUpdating = False
.DisplayAlerts = wdAlertsNone
End With


'画面の設定
ActiveWindow.ActivePane.View.Type = wdPrintView


'変更履歴関係の処理
With ActiveWindow.View
.ShowRevisionsAndComments = False
.RevisionsView = wdRevisionsViewFinal
End With



Selection.HomeKey Unit:=wdStory
Selection.Find.ClearFormatting

With Selection.Find
.Text = yougo
.Forward = True
.Wrap = wdFindContinue
.Format = True '上記フォーマットを利用する
.MatchCase = True '大文字小文字の区別
.MatchWholeWord = False
.MatchByte = True '半角全角の区別
.MatchAllWordForms = False
.MatchSoundsLike = False
.MatchFuzzy = False
.MatchWildcards = False
End With



'検索でヒットした文字列を太字にし、色を変える
Do While Selection.Find.Execute = True
'ヒットした数を加算
hit = hit + 1

Selection.Collapse wdCollapseEnd

Loop

ActiveWindow.Close

'画面設定戻す
With Application
.DisplayAlerts = wdAlertsAll
.ScreenUpdating = True
End With



MsgBox "「" & yougo & "」" & "は、この文書(クリーン)中で " & hit & " 回使用されています。"


End Sub

2008-05-30

編集者な日々(3) 人間らしい置き換え

編集者には置き換え技術も必要になってきます。今日やってみたのは、以下の置き換え。

デラウェア法25 → デラウェア法§25

主に順番の入れ替えですね。


執筆者の皆さんに内容に集中していただくためにも、形式的な面はできるだけ編集者で楽に処理したいもの。楽にというのはこちらの事情ですが・・・

今回の本はアメリカの法律の条文について、条ではなく§を、逆にドル表示は$ではなくドルをと、結構癖のあるルールになっちゃっています。そのため、各章での記載の統一が結構大変。

今日はとりあえず条文を直そうかと思い、検索技術で対応してみることにしました。

使うのは、ワイルドカード検索

これで、15条、200条、105条a、10a条などという表記を、それぞれ§15, §200, §105a、§10aなどに直していきたいときどうするかというメモ。特に最後の2つはルールが違うので、両方拾えると結構おいしい。

ワイルドカードというのは、人間の頭で考えることを実現しようという仕組み。例えば、同条、ってなっているのと、条項ってなっているのと、15条となっているの、今回置き換えたいのが3つめであることは人間には明らか。一方、人間は直し漏れを完全に防ぐのは難しい。そこでこれを組み合わせて、楽にミスが少なくなるような校正をしようというのがこのエントリ。

ドラフトを読んでいると、今回は、どうやら数字か半角英数がしばらく続いたあとに条となるところまでは執筆者の方で勧めていてくれている模様。とすると検索としてはこれをルールにしてしまうのが一番。

ワードの置き換え・検索のオプションで、ワイルドカードを使用するにチェックを入れると、以下で上記の4つの例、いずれも検索でヒットし、同条、条項などはヒットしなくなります。

[a-z,A-Z,0-9]{1,5}条

これを解説すると、半角英数が、1-5個連続して続いて、次に条となっているのを全部拾ってくれる式ですね。

で、次に、なぜか一発で置き換える方法がわからなかったので(安易に言うべきではないですが、バグかもしれません)、段階を分けると、、、

英数の部分と、条の部分を入れ替える。

これもワイルドカードででき、同じくワイルドカードを使うオプションをチェックした状態で、

置き換え前文字列:([a-z,A-Z,0-9]{1,5})(条)
置き換え後文字列:\2\1

としてやると、半角括弧でくるまれた2つのグループの場所が入れ替わる。バックスラッシュになっているところは、¥の半角を利用してください。

もちろん全部置き換えでなく、一つ一つ見て置き換えていくのが望ましいですけどね。弁護士業務は実際の目が命ですから。

そうすると、15条、200条、105条a、10a条などという表記は、それぞれ条15, 条200, 条105a、条10aとなる。

この最後の105条a、10a条の両方が拾えているのは結構実際便利でした。

で、これを条→§でおきかえてやると、、、

めでたくそれぞれ§15, §200, §105a、§10aとなるわけですね。

まー、式が面倒でカスタムメイドしないといけないことなどがあり、結構人に伝えるのは難しい面もあるのですが、あるルールのなおしを全体に適用しないと行けない場合(例えば$15を15ドルに)など、結構これに近い式を使って見ると便利なことはあります。

全体の中身にコメントしながら、形式面ももれなくコメントというのは、訓練でできるようになるのですが、まー、機械の補助もそれはそれで便利につかえるものです。

よろしければお試しください。


2008-05-27

編集者な日々(2) 単語帳の作成

英語で習った内容を日本語で出版するので、翻訳が必要。この訳が場所によってずれるのは極力避けたいところ。


条文でも契約書でも判例でもないので、まぁ、読んでわかればいいというものの、結構ちゃんとした本になる(はず)なので、できるだけ訳はそろえたい。

本文中、英語を併記する場合、「日本語(英語)」という書き方をすることにしている。たとえば「取締役(director)」のように。単純だが、実は訳がずれていると明らかに読み手にわかっちゃう、実務上はあまりよろしくないやり方(笑)。

特に何人も担当者が章を分担して本を作成している今回のような場合、超危険。なので、無論基本ルールは読んでわかればいいというものにしてあるのだが、さはさりながら・・・

編集者としては、ちょっとでもあわせたくなるものです。

というわけで今日は単語帳を作りました。その方法を記しておこうかと思います。

1 単語を拾う

検索するのは上記のようなパターン。解析すると、日本語、全角括弧、半角英語となっているわけですね。

なので、この流れになっているところを、検索して、それをコピーしてやる。

具体的な作業は下記。

(1)まずは、例によってはたくり起動!

(2)で、ドラフトのワードファイルを開く。

検索は、以下で行いましょう。

(3)まず、全角括弧「(」がたまに半角の人がいるので、これがないかチェック。

検索画面で半角全角を区別するオプションにチェックを入れた状態で、ドラフト内の半角括弧「(」を検索してやる。で、必要に応じて全角に置き換え。

これで、拾いたいところは、日本語、全角括弧、半角英語の流れになっているはず。なっていないものは無視(笑)。

なお、全角括弧にそろえたいのは、下のワイルドカードと半角括弧が結構めんどくさい関係だから。全角使えるって結構便利です。

(4)単語の検索

今度は、半角全角区別のオプションを外して、ワイルドカードを使用するというオプションにチェック。

その上で、「([a-z,A-Z]」で検索してやる。これは、全角括弧の後に半角の大文字又は小文字のアルファベットがくるものを検索という内容。

これで必要箇所を探してコピー。ひたすら繰り返す・・・・・・しんどいけど、文系の限界(笑)。

2 単語の整形

例によってEmEditorで整形。

(1)EmEditorを起動し、はたくり(行末に改行がないときは改行を入れるオプションを使用)を使って、先ほどコピーした単語を全て貼り付ける。

(2)その上で、日本語と英語の間の全角括弧をタブに置き換えましょう。エクセルを使うためにね。

置き換えは、正規表現を使用する、とした状態で、

置き換え前 (     ・・・・全角括弧
置き換え後 ¥t    ・・・・タブっていういみ

これで一発ですね。

で、これを全部コピー。

3 エクセルに貼り付け、使いやすくする

(1)エクセルを起動し、先ほどコピーしたのを貼り付ける

(2)一番上に一列空白行を追加し、タイトルをつける。

章番号

日本語

英語

1

取締役

director




こんな感じ。

(3)で、一番上の行にオートフィルターを適用してみる。

メニューから、データー>フィルターー>オートフィルター

これで欲しい章だけ表示することができる。その章にたとえば色をつけると(上のペンキマークのアイコンとかで)、全体表示に戻したときに、自分の章だけ色がついていて、他の章の人と折衝がしやすい仕組み。

英語・日本語での並び替えと合わせると、だいたいやりたいことができてくる。

ま、書くと単純なんですが、数が多いと大変。今日は700個くらいの単語帳でしたが、しんだ。時間は3時間くらいのものでしたが、指が、指が、、、、ま、その後このブログを書けるくらい(笑)死にました。

指がつって頭がもうろう・・・となったときに考えたのは、日本にいたときは秘書さんとかパラリーガルの人にお願いしていた(方法とかは自分で考えるが)作業を自分でやると死にそう。改めて感謝の念がわきました。



2008-05-25

編集者な日々(1) サイテーションチェック

みんなで本を書いておりその編集役となっている。珍しい機会なので、こうしたら楽だったというのをある程度メモしておこうと思います。

単なる備忘なので、書き方も内容もいつもにも増して適当です。


米国の判例を引くときは、サイテーションをつけなければいけず、それのチェックは編集者の仕事となります。

大量に数字、英語をチェックしなければならないので、とりあえず楽な方法が必要。

(1)判例の記載箇所の検索

まずは、チェックする判例のピックアップ。

サイテーションには、数字が含まれているので、これを検索することにします。

Wordの検索(ctrl + f)で、オプションの中から、Wild cardを使用するを選択し、検索語を
[0-9, 0-9]
としてやる。

これで「半角の数字または全角の数字」があれば全部拾ってくれる。

これでとりあえず判例を見つける。

(2)はたくり

見つけた判例をとりあえず全部取り出したい。

こういったときに便利なのが、クリップボードの遍歴をとってくれるソフト。以前紹介のはたくりを使用。

過去のはたくりの紹介

こいつを起動しておき、先ほどの検索でサイテーションのところにきたら、判例とサイテーション部分に分けてコピー。これで記録をとってくれる。

(3)一覧表の作成

判例とサイテーションの一覧を作る。

さきほどの遍歴をはき出す。はたくりからWordかEmEditorに貼り付ける。その際、はたくりの設定で行末に改行がない場合に「改行する」としておくと便利。

これで、

判例名
サイテーション
判例名
サイテーション




という一覧ができるはず。

数が多くなければ、これを手作業で
判例名<タブ>サイテーション
判例名<タブ>サイテーション
判例名<タブ>サイテーション




という並びに変えて、エクセルに貼り付ける。多ければEmeditorのクイックマクロなどを使用。

過去のEmEditorの紹介

これで一覧表の完成。何の本かばれそうだな。


Cheff v. Mathes

199 A.2d 548 (Del. 1964)

Unocal Corp. v. Mesa Petroleum Co.

493 A.2d 946 (Del. 1985)

Unitrin, Inc. v. American Gen. Corp.

651 A.2d 1361 (Del. 1995)

Moran v. Household International, Inc.

500 A.2d 1346 (Del. 1985)

Carmody v. Toll Brothers, Inc.,

723 A.2d 1180 (Del. Ch. 1998)

Quickturn Design Systems v. Mentor Graphics

721 A.2d 1281 (Del. 1998)

Revlon, Inc. v. MacAndrews & Forbes Holdings, Inc.

506 A.2d 173 (Del. 1986)

Paramount Communications, Inc. v. Time, Inc.

571 A.2d 1140 (Del. 1990)

Paramount Communications, Inc. v. QVC Network, Inc.

637 A.2d 34 (Del. 1994)

Blasius Indus., Inc. v. Atlas Corp.

564 A.2d 651 (Del. Ch. 1988)

MM Companies, Inc. v. Liquid Audio, Inc.

813 A.2d 1118 (Del. 2003)

Unitrin, Inc. v. American Gen. Corp.

651 A.2d 1361 (Del. 1995)

Omnicare, Inc. v. NCS Healthcare, Inc.

818 A.2d 914 (Del. 2003)

In re Toys "R" Us, Inc.

877 A.2d 975 (Del.Ch. 2005)




ま、一覧表である方が人とも情報を共有しやすいですしね。

(4)チェック
これをプリントアウトして、手元に置いてチェック

レキシスかウェストローあたりで、先ほどコピーしたはたくりをペースとしてチェックしていく。

こんな感じでやったら多少楽でした。




2008-05-20

トレード (13)トレードかadd/dropか

トレードとFAでのadd/dropというのは背反関係にあり、プレイヤーは適宜いずれが効率的か選択して動くことになります。FAが厚ければadd/drop、薄ければトレードが有効となる場合が多いです。


FAからのadd/dropの特徴(利点)として、相手方が常に受諾すること、取引コストが不要であること、マーケットが大きいことがあります。

FAは相手のプレミアの予測が不要(必ず受諾)

Xとのトレードが成立するYの範囲は以下の式でした。

oX+pAX - pAY < oY < oX+ pBX- pBY

FAの場合、受諾行為は自動なので、式の右半分が不要です。したがって

oX+pAX - pAY < oY

だけ考えればいいと言うことになります。これで実際上はとても時間と見極め能力のかかるBにとってのプレミア(pBY、pBX)の予測という作業が不要になり、自分の側だけで確定的に考える事ができるようになります。

取引コスト不要

上記、pBX, pBYを推測する作業も取引コストの一環ととらえることができますが、これ以外にもトレードは実際上やりとりに時間がかかるほか、受諾後ペンディング期間があるために、最終的にロースターに反映されるタイミングも非常に遅くなります。従って機動的に動くこともできないし、不確定の要素が多くなります。還元すると不確定であることという意味でのリスクが非常に高い。

このような追加コストがかからないというのはadd/dropの魅力の1つとなります。

マーケットが大きいこと

フォーマット、リーグの面子にもよりますが、大概は、トレードのマーケットに比べてFAのマーケットは大きいです。野球のパブリックの場合、実際にFAにいる人数が相当多く、毎日FAでその日活躍する人を(神業的に)とることができれば、最初のドラフトがどんなに失敗でも通常は1位になれるくらいの厚みがあります。これはアメフトとかとは大きく違いますね。

FAのデメリット(トレードのメリット)

FAからadd/dropすることと、トレードを比べた場合、FAのデメリットはそう数多くはありません。ただ、トレードの利点のうち一番大きなものとして、FAにはいない大物を狙えるというのはあります。

枠に限りがある中で日々のロースターを選択していく以上、最終的に問題になるのは選手の質です。神業的add/dropには大きくは期待できませんしね。この枠を継続的に与えてもいいなと思える質がある選手というのはやはりFAではなく各チームに属しているのです。従って、これを獲得するには基本的にはトレードしかないわけです。

FAとトレードの交錯

以上からすると、FAにいるような選手については、簡単にadd/dropをするのが効率的で、手間のかかるトレードは、FAにはいないような大物をねらう場合に使うのが合理的ということになります。

これをAの視点から場合を分けて考えてみます。

プレミアが一般的に選手の客観的な価値に比べて十分に小さい限り、トレードが成立するのは以下の範囲となります。

oY ≒oX

一方、add/dropが成立するのは、

oX<oY

従って、Xを持っているAの発想としては、当該プレイヤーを捨てるかトレードに出すかというのを考える場合、客観的により価値があるプレイヤー(Y)がFAにいればまずはFAをあたり、Xがそれがどうしてもいないような大物である場合(oXが大きい場合)のみトレードすべきということになります。

一方Xに(のみ)プレミアが発生している場合、トレードが成立するのは、

oX+pAX< oY < oX+ pBX

プレミアが人により変わらないとすると、

oY ≒oX+pX

が成立します。

一方同様の作業で、add/dropの式は、

oX+pX< oY

よってこの場合、Xについてadd/dropにするかトレードにするかの基準はoXではなくoX+pXで決定すべきということになります。

で、このpXがあるか否か決定するために必要なのが価値軸を増やすこと、ですね。

実際のプレーでは、パブリックのカジュアルでやる限り、ほとんどの選手には意識すべきほどのプレミアはつきません。従って単純にoXとFA層だけ見比べてadd/dropをするか決めればいいし、FA層より実力が高い選手についてはトレードに出す、という単純な戦略で大丈夫となります。これが一般的な価値とされるOrankが重視される理由ですね。

ただ、competitiveなリーグや、プライベートのリーグではときに一部の選手に相当のプレミアが発生している場合(pX, pBXが大きい)もあります。その場合は、単に自分にとって不要な選手である(oXが小さい、pAXがマイナスなど)というだけでdropせずに、トレードに出す方が効率的であるということになります。

FA層の価値評価に与える影響

選手の価値を計るのに、次に存在する同じ条件(ポジション)の選手よりどの程度優れているのかという手法があることは前に述べたとおりです。

この評価手法は典型的にFA層との比較感で選手の評価をする場合に役に立ちます。

たとえばFA層に本来的に8の成績の選手がいる場合、9の成績の選手をoX=1と評価するわけです。

式にすると、成績をrX、FA層の同等選手(一般)の成績をfrXとすると、

oX=rX-frX

ですね。

従って、FA層が厚くなれば、frXの値が増えるので、その選手の価値(oX)は減り、逆にFA層が薄くなればその選手の価値が増えることになります。

選手の価値をこのように計った場合、FAが薄いとdropしない方がいい選手の層(X)が増えます。逆にFA層が厚ければadd/dropでいい。その結果、以前書いたようにカジュアルなリーグほどトレードよりadd/dropを繰り返すべきことになり、このようなリーグではトレードするほどの価値のある選手(X)というのは非常に少数になります。

なお、余談ですが、先ほどの式との関係では、rY=frYとなるのが一般なので、oY=0となり、

rX<frX

の関係が認められるときは、dropすべきという表現になります。FAに自分の手持ちの選手より優れた選手がいればdropすべきということを表しているに過ぎない、とするのはちょっと寂しいので、「FAが厚くfrXが大きい場合、dropすべきXの範囲も大きくなる」と表現しておきます。FA層が厚いならトレードよりadd/dropですね。

また、このfrを考えるやり方はそもそもoXの算定ではなく、プレミアの算定の場面の話では?という批判も考えられますが、以前記載したように客観的な価値が何でなにがプレミアかの分類は考え出すと結構難しく、ここはとりあえず客観に分類したということですね。

これをプレミアに分類する(FA層の厚さがpXに影響すると考える)と、「FA層が薄いと普段プレミアの発生しない選手にまでプレミアが発生する場合がある」ということになろうかと思います。結論は一緒ですね。FAが薄ければ薄いほどdropするまえにトレードを検討すべき、となる選手が多いということになります。

編集後記

このように、ある選手についてどう取引すべきか(add/dropかトレードか)というのは、場合により異なります。2つしか選択肢がないので、片方が有利な状況であればもう片方はとるべきではない道ということになる、まぁ、あまりに当然のことで、書いてみてちょっとがっかりなエントリでした。FA層の厚さを書くときからからわざわざ数回に分けて相当検討を重ねたのに・・・ま、浅はかさ故なんでしょうね。

何となく自分で整理できた気がするからよしとしましょう。



トレード (12)価値軸を増やすとトレードは増加する

価値軸を増やすと、探し得る案件の数は増加します。


他のチームは何を考えているかわからない

ある選手を出す場合の、トレード案件の潜在的な数(マーケット)は、トレードの容易さに非常に密接に関連します。

FA以外の選手について、ある選手(以前からの例を使い、たとえば2B2(5))で取得できる3Bのマーケットの広さというのは、他のチームの状況に左右されます。

他のチーム(たとえばA)の3B(たとえば3B1(10))について、Aが、2B2(5)と交換するかというのは、Aにとって2B2(5)が何らかの面で、3B1(10)を上回る価値を有すると考えたときのみになります。

ここでポイントになるのは、実際のゲームでは他のプレイヤーが何を考えているかわからないということです。

もし、Aが2B2(5)の方が3B1(10)よりも価値があると思えば、2B2(5)を対価とするマーケットに3B1(10)は存在することになり、そうでなければ3B1(10)は存在しないということになります。

そして、Aが2B2(5)と3B1(10)をどちらが価値があると考えるかは、Aの価値軸の数や価値観によって変わってくるので、これをBが想定するのは非常に難しい。Orankという便利な物差しで説得されてくれる相手であれば楽ですが、大概100%Orankに従って動いている人などいないので、大概、手探りでマーケットを確認していくことになります。

このように2B2(5)をベースにした場合に、他のチームに所属する選手について、マーケットがどのくらいあるのか、それを画する作業自体非常に困難を伴います。

式で考えてみる

以下の状況設定で式にしてみます。

選手

所属

客観的価値

Aの認めるプレミアム

Bの認めるプレミアム

X

A

oX

pAX

pBX

Y

B

oY

pAY

pBY



なお、以前から書いているように何を客観的価値とみるかは人それぞれで、客観的な価値とプレミアムの境界は非常に曖昧ですが、ここは両者が区別可能との前提で考えることにします。で、この客観的な価値(oY、oX)はAB両方がわかるものとします。

最初XはAに所属し、YはBに所属します。従って、最初のお互いの満足度はこんなかんじ。

A X(oX+ pAX)
B Y(oY+ pBY)

AがBにオファーをするのは、Aにとって、XよりYの方が価値がある場合ですから、以下の式が満たされる場合です。

oX+ pAX < oY+ pAY

式で書くと難しそうですが、言っていることは単純です。AがXよりYが欲しいと思ったらオファーする、それだけですね。

逆に、Bがアクセプトする条件は、BにとってYよりXの方が価値がある場合です。

oY+ pBY < oX+ pBX

この両方の式を満たす場合のみトレードが成立します。

Aにとっての「Xを対価として得られる選手」のマーケット

じゃ、AがXを持っていた場合、対価となり得るYはどうはかればいいでしょうか。いずれの式もoYでまとめてみます。

oX+ pAX – pAY < oY < oX+ pBX- pBY

これを満たすYがマーケットにいる選手ということになります。

なんのこっちゃ、という感じですが、要は、自分がXを出して相手もYを出してくれる、こんな関係にあるYはこの式を満たすことになります。

ABいずれもXYにプレミアを認めないと取引成立することはありません。上の式で言うと、pがついているのが全て0である状態です。

唯一oX=oYのときに成立し得ますが、そもそも取引をする必要がありませんからね。

価値軸を増やすとオファーの範囲が広がる

設定上、Aがわかる数値は、oX、oY、pAX、pAYの4つです。

価値軸を増やすというのは、pAY、pBYの値の取り得る幅を増やすということですね。プレミアムというのは要は自分の持っている価値軸のうちどれかを使って得られる値ですから。これにより、上の式で見る場合、oX、oYに比べたプレミアムの部分が相対的に大きくなり、オファーできる案件が増えます。

具体感のある数字で言うと、たとえば、oXが100であるとします。でプレミアのありえる値の範囲が-10から10(以下表記は[10]とします。)とします。たとえば嫌いとか、同じポジションの上位がいるとすると、マイナスのプレミアがつくわけですね。

オファーできるかは、oX(100)+ pAX[10] – pAY[10] < oY、を満たすYですから、取り得るoYの値は、80-120。

一方、あり得るかどうかはともかく、極端な例としてプレミアが[50]だとすると、

oX(100)+ pAX[50] – pAY[50] < oY

オファーできるYのoYは0-200と広がるのです。

プレミアはいろんな価値軸ではかったときの値ですので、その最大値は、価値軸を増やせば増やすほどプレミアの比重が大きくなります(上の設定の仕方だと[10]とかなっているうちの、10の数が増加する感じです)。従って、オファーできる案件も増えるのです。

価値軸とアクセプトの範囲

一方、アクセプトするか否かは、以下の式。

oY < oX+ pBX- pBY

Bのプレミアの付け方がわからないAとしては、これを予測するしかないのです。なので以下の範囲はAの予測ベースの話ということですね。この場合も、価値軸が増えて、上記のように[10]が[50]になると受諾(予測)の範囲は増加します。

これは何を意味するかというと、一見誰も受けそうにないオファーでも、実は受けるかもというオファーを見つけるのに役立ちます。

トレードは交換が基本なので、相手が極端なプレミアムを払ってくれたり、こちらが極端な形の崩れをなおしたりするのでなければ、直接大幅なチームの増強はありません。したがって、このように価値軸を増やして、相手が受ける「かも」という案件をたくさん見つけることができるというのは、トレードでチームを継続的に強くしていく上では重要な能力となります。

なお、相手がその価値観をもっていることが確定できる(たとえばバランス重視、Orank重視、大砲好き、先発軽視・重視、盗塁重視とか)のであれば、相手が受ける「かも」という具体的な案件を見つけ、取引にこぎ着けることができる可能性・こちらが最大限の利益を受ける点を探す容易さが増大します。これはpBX、pBYの値を[10]から8とかに確定していく作業ができるからです。敵を知り己を知らば百戦危うからずといいますが、敵を知りの部分ですね。

まとめ・雑感

価値軸を増やすとトレードでオファーできる案件が増え、また見つけることのできる、受けてもらえる「かも」という案件の数も増えます。

これは実際の感想とも合致する感じです。

何度も書くように、野球は他のスポーツに比べて制約がきついので、いろいろな価値観というのは比較的容易に見つけることができます。これを増やすだけで、トレード成立件数というのは結構増える感じですね。無論リーグのメンバーの性向にもよりますが。

実際の社会でも、ま、門外漢雑感ですが、再生案件とかはまさにこんな感じなんでしょうかね。再生対象が決まっている場合は金集め(投資家探し)で、お金・投資家がすでにいるファンドでは案件探しで、こういった、受ける「かも」の層をより広く見つけることができるというのは、結構重要視されるのかもなと。